In the warm rain【Brack☆Jack3】
☆  ☆  ☆



 様子がおかしいと感じたのは、船の最下層と思われる場所に到着する頃だった。

 後甲板からここまでの間に、確かに何人か敵に出くわしたが。


「…どうも…少なすぎるわね…」


 もしかしたら、行動が予測されているのかも知れない。

 ユイは物陰に身を潜めたまま、考えを巡らせる。

 この狭い通路を突き当たれば、エンジンルームに行くことが出来る。

 ――だが。

 例えエンジンを破壊したところで、この船は沈むことはない。

 ここが闇の組織『ウー・イー・シー』の本拠地なら、この船は何としても海の底深くまで沈めなくてはならない。


「…それが、お祖父様の遺志なのよ」


 もう一度確認するように、ユイは小さく呟いた。

 そして、狭い通路の奥にある小さなドアに目をやる。

 少し昂ぶっている心臓の鼓動を沈めるように、ゆっくりと大きく息を吸い、銃を胸の前で構える。

 そしてユイは、足音を立てないように再び移動を開始した。

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