In the warm rain【Brack☆Jack3】

【4】

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 ユイは全身水浸しになりながら、次の場所に移動する。

 エンジンルームには行かなかった。

 大勢の戦闘員が待ち伏せしているのが分かったし、この船を沈めるならこの方法が一番確実だった。

 ユイは、固定式の時限爆弾で船底に穴を開けていた。

 こういう大きな船の場合、隔壁によって多少浸水しても船は沈没しない構造になっている。

 だから、何か所も船底に穴を開け、船のバランスを崩すことに専念する。


「…無駄ですよ」


 何個目かの爆弾をセットし終わった途端、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。


「無駄ではないと思うけど」


 ユイはそう言い返す。

 船は既に少しずつ傾きかけている。

 ここを浸水させれば、バランスは大きく崩れる。
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