In the warm rain【Brack☆Jack3】
「なっ…」

「アパートからこっち通うのもかったりぃんだよ。ならこっちに寝泊りしたほうが合理的だろ」

「ほ…本気で言ってるの?」

「もちろんだ」


 大真面目に頷くレン。

 ミサトは一瞬、考え込む。

 確かにここは部屋も余っているし、アパートを引き払えばその分、家賃も払わなくていい。

 そこらへんを考えれば、レンの言うとおり“合理的”ではあるのだが。


「やっぱダメだよ、そんなの」

「どうしてだ?」

「どうしてったって」

「一人でいたいのか?」


 どきん、と心臓が大きく脈打った。

 ずっと孤独には慣れてきたはずだった。

 ――だけど。


「わかった…アパート、早めに引き払えばいいよ」

「あァ、そうする」


 どうせ荷物なんて少ねェんだから、とレンは店を出ていく。
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