In the warm rain【Brack☆Jack3】
 その雨は、応戦した時についた血の匂いを洗い流し、そして滅入っていた気分さえも拭い去ってくれるような気がした。

 気になるのは、さっき男が言った言葉。


『何も、知らねェんだな』


 ただの金目当ての強盗なら、この街では珍しくもないが。

 実際、店にも過去一回、強盗が入っているし。

 だが、今の男たちは違うような気がした。

 確かに、戦闘には長けていない、まるで素人のような集団ではあったが。


「何が、何も知らないよ。あんたらこそあたしの何を知ってるっていうのよ」


 歩きながら、一人呟いてみる。

 だが、何故か気分は、さっきよりも幾分かすっきりしていた。

 今はあまり考えたくなかったが。


(このすっきりした気分って、何なのよ…)


 もう、漠然と答えは出ている。

 この感覚。

 忘れることは、多分一生有り得ないのだろう。
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