In the warm rain【Brack☆Jack3】
 ピンと張り詰めた緊張感と、小さい頃から徹底的に教え込まれた野性の勘。


(何かが、起きてるのね)


 こういう予感は外れたことはない。

 だが、今更どうやって動けばいいのか。

 やっと、手に入れた夢のような生活。

 何もない、平穏な日々。

 雨に打たれながら、ミサトは『AGORA』の前に立ち止まった。

 ここは、色々な意味でミサトの人生に影響を与えた、大切な人の思い出の場所なのだ。

 まさか自分がここに住むことになるとは、思ってもみなかったが。


「…ジジイ…。一回この手で壊しちゃったけど、この店はあたしが守るから。ジジイの夢だもんね、ここは…」


 わざと古びた造りにしてある建物に、ミサトは優しく微笑みかけた。
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