メルヘン侍、時雨れて候
欠けた歯を舌で触ってから、そこらへんにふうと吐き出した。

あの角を曲がると家というカーブで足がもつれてメルヘンさんは転倒してしまい。ごろごろと転がるようにして山田さんの家の植木鉢を沢山倒してダメにしてしまった。

あまりにひどい音がしたものだから山田夫妻は家から出て来て、うつぶせに倒れるメルヘンさんと自慢の鉢植えや盆栽が無惨なことになってる様を見て、ぐっとちょんまげを握ってガタイの良い旦那さんは、メルヘンさんを立ち上がらせては見たものの、あまりに泣いてるもんだからと、とりあえず家に上げた。

そこでいただいたお茶は、とてもあたたかくて、とてもおいしくて、さらにメルヘンさんを泣かせた。
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