ラピスラズリの恋人
「今までにそれなりの経験を積んで来たつもりですが、どんな相手でも結婚を考えた事はなかったんです。でも……」


「今の恋人と出会って考えが変わった、と?」


織田さんを真っ直ぐ見つめ、ゆっくりと大きく頷く。


「初めて、本気で他人(ヒト)の幸せを願いました。彼女にはずっと笑顔でいて欲しい、と……。本当は、遠くからそう願っているだけのつもりだったんですけどね」


俺の話に耳を傾ける彼は、楽しげな表情をしながらも真剣に見えた。


「ある時、手が届くかもしれないと思える距離に近付けた途端、そんな考えはどこかに吹き飛んでしまいました」


それが嬉しくて、自然とフッと笑みが零れた。


< 52 / 100 >

この作品をシェア

pagetop