ラピスラズリの恋人
一人になった部屋で仕事の書類に目を通した後、そろそろ瑠花も帰宅した頃だろうと電話を掛けた。


規則的に鳴るコール音が途切れ、少しだけ間が空く。


「もしもし?」


その僅かな時間すら惜しむように口を開こうとした直後、耳元で響いたのは低い声だった。


驚きで飲み込んだ言葉の代わりに、思わずマヌケな声が漏れる。


「は……?」


それから数秒もしないうちに状況を把握し、眉を寄せてため息をついた。


「どうしてお前が出るんだよ?英二」


「相変わらず、俺には素っ気ないな〜」


途端にククッと笑った英二は、俺の心情を察していると言わんばかりに不満の言葉を零した。


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