ラピスラズリの恋人
「おかえりなさい」


少しだけ遠慮がちに、だけど柔らかい笑みとともに落とされた言葉。


胸の奥から込み上げる、この“愛おしさ”以上の気持ちの呼び名を、俺は知らない。


「ただいま、瑠花」


歩み寄って来た瑠花を廊下の真ん中で捕まえ、心を包む感情を隠す事無く抱き締めた。


「一秒でも早く理人さんに会いたくて、来ちゃいました」


疑問を口にする前に答えてくれた彼女が、腕の中で微笑んだのがわかる。


「理人さんがいない部屋に来ると余計に寂しくなる、って思ってたんですけど……。今日帰国する事を知ってたから、やっぱり我慢出来なくて……」


瑠花は顔を上げ、複雑そうな笑みを見せた。


< 72 / 100 >

この作品をシェア

pagetop