君と私。
「葵、英語の教科書借りていい?」
蒼ちゃんが教科書を忘れる事はない。
だって、蒼ちゃんは昔から置き勉だもの。
だから…
「…蒼ちゃん、また誰かに教科書貸したの?」
多分だれかに貸したのだ。
「まぁな。さっき正也に貸したんだよ。あいつ新井と喧嘩したかなんかで、最近めっちゃ不機嫌っつーか、もの忘れるっつーか…んまぁ、あいつに貸したせいで俺の教科書がない訳。」
と、いたずらを仕掛けた小さな子供のような無邪気な笑顔を見せた。
蒼ちゃん、やっぱり優しいな…
「うん、いいよ。あ、教科書教室にあるから、一緒にきて?」
私が聞くと、層ちゃんは『ん』と短く返事をする。