Special Edition


ステージに上がる彼女を内心冷や冷やしながら視線を送る。


やはり、あの丈は短過ぎんだろ!

次にこういう場に連れて来る際は、

もっと上品で肌の露出度が極力抑えられた服にする!


……俺は彼女が優雅に歩く姿を眺め、そんな事を考えていた。



すると、彼女の隣りにもう1人の女性。

希和が羨望の眼差しを送っていた家元夫人。

藤色の和服姿が板についていて、

椅子に腰かける所作まで気品が溢れている。


桐島氏が先に生け始めた方は家元夫人。

俺は腕を組んで眺めていると、


「失礼致します」


先程と同じ声音がし、振り返ると同じスタッフが会釈する。


「桐島様より、御影様にもお越し頂きたいとの事です」

「……………分かりました」


そんな事だろうと思ったよ。

希和に花を生けて終わりな筈が無い。


俺は溜息まじりに腰を上げ、スタッフの後を追うと。


ステージ脇の衝立の影に俺と同じように呼ばれた人物が立っていた。


茶道家の正装・袴姿。

その姿には希和が言うように風格がある。

そんな彼は手慣れた所作で着崩れを直していた。


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