Special Edition
俺に気付いた彼は会釈し、
「初めまして……」
「………初めまして」
落ち着いた感じの声も家元の風格なのだろうか?
お互いに苦笑しながら視線を合わせた。
すると、
「御影さんですよね?」
「……はい」
「私は、茶道香心流 香雲と申します」
落ち着いた声音にプラスして、
男の俺でも爽やかだと感じるほどの清々しい笑顔。
それは、平常仕様の微笑みなのだろうか?
希和は言っていてた。
2人は他人が近くにいても気にしないほどに顔を近づけ、
他人が分かるほどにお互いに愛し合っているオーラを出していると。
彼女の見間違いかもしれないが、少し気になっていた。
自宅ならともかく、家元という立場の人間が
こういう公の場でする行動だろうかと。
だから俺はカマをかけるつもりで尋ねてみた。
「私の連れが、家元夫婦を羨ましそうに眺めてましたよ」
「えっ?」
「自分……無愛想な上、不器用なので……。彼女に優しくしてあげたくても中々上手く出来ないので」
「………はぁ」
「先程、お2人が見つめ合って、とても良い雰囲気になられてましたけど………、あの、そういう時は……どういう会話をしてるんですか?」
「へっ?」