Special Edition
俺の言葉に驚く家元。
無理はない。
いきなり突飛な発言をしているのだから、
怪訝な顔つきになってもおかしくない。
けれど、俺は知りたかった。
彼女があんなにも羨ましそうな顔をしていたから。
俺のプライドがどうこうじゃない。
彼女が喜ぶことが知りたい。
どうやったら、彼女の心を知る事が出来るのか。
きっと彼なら、俺が求めている答えを知っている気がした。
彼女が言うように、仲睦まじい2人をこの目で確認したのだから。
俺の顏色を窺うように視線が絡まる。
何とも言えぬ空気に包まれ、居た堪れなくなって思わず苦笑した。
すると、スッと肩を近づけ不敵な笑みを浮かべながら、
「今すぐキスしろって言ったんです」
「はっ?」
「いやね、彼女が御影さん達の登場に見惚れている間に、俺が桐島氏の娘と会話してたんですよ」
「……はい」
「で、妻の表情から察して嫉妬してる感じだったので、自分も御影さん達に嫉妬してたお返しに」
「え?……自分達に嫉妬されたんですか?」
「えぇ、まぁ。妻の視線を独占してたので」
彼は悪戯っぽく微笑んではいるが、
彼が発した言葉には好感が持てた。
彼が本気で心の内を話していると感じたからで………。