Special Edition
その後、自宅マンションに戻った俺ら。
希和は着替える事無く、キッチンで珈琲を淹れている。
そんな彼女をカウンター越しに眺め、
「希和」
「……はい?」
自然と絡まる視線はお互いに何かを探ろうとしている。
俺が不安なように、きっと彼女も不安なのかもしれない。
先日だって、彼女に『スキ』だと言えと言われてしまった。
そこまで、彼女を追いこんでいるのは紛れもなく、この俺だ。
普段から目で追っているし、
視線が絡まれば微笑むように努力している。
仕事で苛ついている時以外は、冷視線だって控えてるし。
何より、彼女の事を24時間考えている。
けれど、考えているだけではダメなのだろう。
………家元が言うように、アクションを起こさねば。
呼びかけたはいいが、次に出て来る言葉に詰まり、
結局、彼女は珈琲を手にして俺がいるリビングへと来た。
「何でしょうか?」
いつもの定位置に腰を下ろす彼女。
俺の右斜め横。
いつもなら膝を崩すが、さすがに今日は崩せないようだ。
両手を際どいラインに当てながら正座をした。
そんな彼女に…………。