Special Edition

「世子、嬪宮(ピングン)(世子嬪のこと)とはその後、どうなのだ?」
「母上、一昨日も同じ質問をされました」
「分かっておる。けれど、こうして待ち侘びる母の気持ちも察してくれぬか」
「………」

日に日に期待が膨らみ、ソウォンへの圧力も日増しに強まっている。
世継ぎを授かるのは国儀だと承知していても、こればかりはどうにもならない。

「母上、それほどまでに待ち遠しいのでしたら、お願いが……」
「申してみよ」
「自由奔放な世子嬪なので、宮中での生活は多くの者の目がございます」
「……うむ」
「ですので、極秘で世子嬪と温陽(オニャン)(温泉にて湯治のようなもの)へのお許しを頂きたく」
「おぉ、温陽とな。それは良いかもしれぬ。子を授かるのに体が温まれば効果も期待出来よう」
「……はい」
「良いであろう。王様へは私から話しておきます」
「感謝致します」

宮中では吉日に床入りが決まるが、ひと月に数日程度ではいつになるか分からない。
執務に追われる世子は、ゆっくりソウォンと過ごすこともままならず。
これを機に、存分に世子嬪と過ごそうと考えていた。

「では母上、早々に準備が整い次第、出立致します」
「楽しんで来なさい」

深々と拝礼し、部屋を後にした。
中庭に出ると、ヒョクが駆け寄って来る。

「世子様、もう宜しいのですか?」
「ん、帰るぞ」
「はい」

ヘスの明るい表情を汲み取り、ヒョクはヘスの後を追う。

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