青い星〜Blue Star〜






「まさか……でも、あり得ない話ではありませんね。」





信じられないといった表情で総司が呟く。



長州が異国船に砲撃?


そんなことをすれば、戦になることなど判りきっていたはずなのに。





「十分あり得る話だよ。だって、『歴史』なんだから。このまま何もしなきゃ、そうなるに決まっているじゃないか。で、置いてくれるんだよな?『A bargain's a bargain. (契約は契約)』武士に二言はないよね。今更前言撤回なんて士道不覚悟だよね。」





奏は立ち上がると勝ち誇ったように土方と総司を見下した。


この時代はまだ男尊女卑、即ち男の方が女よりも偉いという悪習が残っている。


だが平成に生まれ、平等社会しか知らない奏にとっては関係のないことだ。



奏の『無礼な』立ち振舞いに土方と総司は苦虫を100匹くらい噛み潰したような顔をする。





「お前みたいな遠慮のないおなごは初めてだ。」



「こちとら、今後の衣食住が関わってんだ。遠慮なんてもんはハナからありません。」





最早、開き直っている奏にこれ以上何を言っても無駄だと悟った土方は小さく溜め息をついた。





「約束は約束だからな。壬生浪士組副長権限を以て沖田奏の衣食住を保証する。」



「Good job!!」





奏は思わずガッツポーズした。


幕末大好き、新撰組大好きの奏にとって、その前身である壬生浪士組に置いてもらえるなんて物事言ってみるものだ。


まさに願ったり叶ったりである。



壬生浪士組に置いてもらえるなんて!


新撰組は現代に近づくにつれ、そのはたらきが評価されてきたが、それよりも前は悪役でろくに研究する人がいなかった。


その為、平成でも史実と創作が入り混じり、真実か判らない話も多々ある。




沖田総司の誕生日っていつなんだろう?


土方と同じく副長である山南敬介の名字の読みは『やまなみ』か『さんなん』かどちらだろう?


土方歳三は美形すぎて奉公先で同姓に襲われた話や女中を妊娠させた話は本当なのかな?


斎藤一の名前の謎も気になるなぁ……





奏の頭の中は完全にお花畑状態だ。



だからだろうか。





「まぁ、これは俺の独断だから近藤さんの許可も必要だな。」





という土方の意地の悪い言葉も一瞬聞き逃してしまった。




< 23 / 84 >

この作品をシェア

pagetop