青い星〜Blue Star〜
「此奴、隊士として壬生浪士組に置けないか?」
「何ィ!!?」
近藤は目を剥いて土方に食ってかかった。
「見損なったぞ!トシ!こんなか弱きおなごを隊士として迎え入れろだと!?おなごに刀を握らせるほど壬生浪士組は落ちぶれてない!」
「いや、ごもっともな意見なんだけどよ……此奴、さっき総司から一本取ったんだよ。」
「は……?」
一本取っただと?
あの総司から?
剣の天才と謳われ、師である俺でさえも本気の彼と手合わせしたら勝てるか怪しい総司を?
「いやー、油断したつもりはなかったですけどねぇ。第一、彼女怪しかったですし。私が彼女の首に刀を添わせたのに物怖じするどころか手刀で刀を落として、そのまま綺麗に大外刈ですよ。」
あはは、と笑い飛ばす総司に唖然とする近藤。
「壬生浪士組で一、二を争う剣の使い手、沖田総司から最も華麗に一本取った女として語り継いでやるよ。」
土方の軽口にむっと頬を膨らませる彼女からは、今の話、とてもじゃないが信じられそうにない。
「そうだ!奏さん、今から道場で為合いましょう!近藤さんも信じていないようですし、私もやられっぱなしじゃ士道不覚悟です!」
「後悔しても知らんぞ。おなごたがらとて侮られちゃあ、此方も黙っとれん。」
「そうと決まれば!」と総司は奏の手をがっちりホールドすると慌ただしく局長室を出ていった。
「だそうだ、勝っちゃん。俺らも道場行こうぜ。」
「しかし……」
未だ乗り気じゃない近藤に土方はニヤリと笑った。
「なんだかな、彼奴は何かをやらかしそうな気がすんだ。でっかいことをさ。」
そう言う土方は壬生浪士組副長の顔でなく多摩のバラガキの顔だった。