青い星〜Blue Star〜




「痴話喧嘩は他所でやれ。犬も食わねぇぞ。」




土方の茶々に皆吹き出した。

奏と総司を除いて。




「いや、愉快愉快。それにしても総司と奏さんは仲がいいなぁ。」


『別に良かない!』




二人の反論も近藤には糠に釘、暖簾に腕押しである。

先程とは打って変わって和やかな空気に奏はほっとした。




「して、奏さん。さっきの話だが俺も総司と同じ意見だ。君の言葉に心打たれた。壬生浪士組局長として君に命ずる。君の誠を最後まで貫いてくれ。好きなだけ暴れるといい。皆、異論はないな?異論がなければ奏さんに拍手を。」




近藤の言葉に真っ先に拍手をしたのは総司だ。

投げやりな言葉ばかりだったが、微笑みながら拍手をする彼に不器用な優しさを感じた。



そして一つだった拍手は二つ、三つと増えた。

拍手をしなかった者は誰一人としていなかった。


ここに来て、初めて自分の存在意義を感じたようで奏は嬉しくて嬉しくて、また泣きそうになった。



「ほれ、泣くな。泣き虫。」




相変わらず、無愛想。

歯切れのいい江戸弁。


自分が想像していた沖田総司と全然違うけれど、それが逆に彼という存在が奏の中に深く刻み込まれた。



確かに彼らはここにいる。



差し出された手拭いを受け取ってしまうのは癪だったから、自分ばかり泣いて彼の優しさに甘えるのが悔しかったから。




ぐいっと彼の手を押し退けた。


私の小さな反抗に気づいたのか何も言い返してこない彼がまた癪だった。


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