天使の舞―後編―
うっとりとイザヨイとの口づけを満喫して、ヨゾラはロッキングチェアから立ち上がり、パタパタと黒く大きな翼を動かした。


その仕草を見て、チェアを独り占めしたイザヨイは、ヨゾラから顔を背け目を閉じる。


「イザヨイ。分かるでしょ?
僕らは一生、一緒に居るしかないんだ。
僕から離れるなんて、夢物語は見ない方がいい。
天界の王子が素敵に思えたのは、一時の気の迷いだよ。
早く目を覚まして。」


自分の背中にチラリと視線を投げてから、ヨゾラが
『現実から逃げちゃダメ』
と、自分自身にも言い聞かすかのような言葉を口にした。


そしてもう一度、背中の翼を動かして、イザヨイを見つめる。


「僕らは、ほら・・・片翼だよ。
忌み嫌われし、双子の悪魔だからね。
僕は右、イザヨイは左の翼しか与えられなかった。
今まで外にも出られず、存在を隠されてきたのにさ。
ここでイザヨイがワガママ言って、魔界王家の恥が・・・つまり僕らの事が、皆に知られちゃってもいいの?
お父様も、お兄様も、困るだろうね。
お母様も悲しむよ。」

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