天使の舞―後編―
「ヨゾラったら、意地悪だね。」


イザヨイは、ヨゾラに向かって口を尖らせた。


しかしイザヨイは、ころっと表情を変えて、恋する乙女の顔を見せる。


「あたし、ヨゾラの事は大好きなんだよ。
ホントだよ。
でも、ごめんねヨゾラ。
あたしキャスパトレイユ様を、諦める気ないの。」


そう言って、ニッコリ笑ったイザヨイは、ロッキングチェアからピョンと飛び降りて、バタンと勢いよく部屋の扉を押し開ける。


「ヨゾラまたね。」


イザヨイは、軽くヨゾラにウインクして、廊下へ駆け出して行ってしまった。


「ちょっとイザヨイ!」


部屋に一人残されたヨゾラは、イザヨイの気ままな行動に、深い嫉妬の気持ちが込み上げてくる。


ゆっくりとロッキングチェアに腰をおろし、鋭い瞳で唇を噛んだ。


「僕は許さないよ。
絶対に、取り戻すからね。」

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