結婚白書Ⅳ 【風のプリズム】


「おばあさんから形見分けだってカメラをもらったんだけど 

そのとき言われたんだ 

僕がお父さんと別れたのは小学校に入ったばかりだったから 

ずっと気がかりだったって 

どうしてあんなこと言ったのか気になったんだ そうか やっとわかった」


「お義母さんがそんなことを言ったの……

あなたのお父さんが離婚されると聞いて お義父さんの怒りはすごかったの 

賢吾君のご両親の離婚と朋ちゃんのことは切り離して考えられなかったみたい

子どもを犠牲にしたって 朋ちゃんとの結婚をずっと反対してた 

そんな結婚は絶対認めないと言ってね」


「でも最後には許したんでしょう? 現に親父達は結婚してる」


「えぇ……桐原のお義父さんの元に何度も何度も通って やっと話を聞いてもらえたの

お義兄さんに聞いたそうよ 子どものことはどうするつもりかと 

親権や養育費 今後子どもとどうやって関わっていくのか

それはそれは細かく確認されて 賢吾君への配慮がわかって 

その上で許しがでたの あとはあなたが知っている通り」


「だから おじいさん達は僕に優しかったのか」


「誤解しないで わけがあったから優しかったのではないはずよ  

桐原のお義父さんがまったく気にせずそうしたかと言われれば 

否定はできないけれど」


「だけど いつも僕だけ特別扱いだった 

夏にもらったカメラだって おじいさんが一番大事にしてた物じゃないか」


「理屈や損得で愛情はわかないものじゃないかしら 

賢吾君のことを ずっとずっと大事に思っていた 

それだけは間違いないわ……私たちも同じ気持ちだから」


「じゃぁ 朋代さんの言葉はどう説明してくれるの? 

葉月を産んだことを後悔してたって そうとれるよ

自分達がそんな関係だったから 子どもを産むのをためらってたの? 

僕に遠慮して子どもを産まないつもりだったの? そんなの僕には関係ない」


「ねぇ そんな風に決め付けないで 心の中はみんな違うのよ 

朋ちゃんが自分の子どもを諦めようとしてたのは本当よ 

自分たちに子どもが生まれたら 賢吾君がどう思うだろうって 

いままで向けられていた愛情が生まれた子に注がれたら

辛くて悲しいんじゃないか そう思っていたって」




< 52 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop