もっと美味しい時間  

「お父さん、驚くだろうなぁ」

「そうなの?」

「一人娘だしね。私のこと、いつまでたっても小さな子どもだと思ってるから」

「俺、殴られたりして」

「さぁ、どうだろう」

上目遣いに見上げ、身体を摺り寄せた。

父も母も私に甘い。
とは言っても躾には厳しく、一般常識や礼儀作法など、事細かく教えこまれた。
そのひとつが、母が教える料理。
女たるもの料理が出来て当たり前と、幼い頃から教えこまれ、そのおかげで慶太郎さんの胃袋を無事ゲット!
いや、心も身体もゲットしちゃったかっ!!

しかし、こと色恋事に関しては、ほんとに甘い……と思う。
自分たちがお互い一目惚れで恋に落ち、親たちの反対を押し切って結婚したからか、私が18歳になった頃「好きな人が出来たら、いつ結婚してもいいわよ」と普通の親ならあまり言わないありがたいお言葉をいただいた。
でも如何せん、その頃の私は恋愛に興味なし。就職してからも、特に異性に惹かれることもなく……。両親をやきもきさせていた。
だから慶太郎さんを連れて帰えれば、大喜びされることはあっても殴られることは100%ないだろう。
早く二人が喜ぶ顔を見たい。

「なるべく早く、挨拶に行く時間作るからな」

「うん。でも無理しないで。慶太郎さんの仕事のペースに合わせるから」

「あぁ、分かった」

目を薄く瞑って頷く姿が、大人でたまらなくカッコいい。
何か、キス……またしたくなっちゃった。
慶太郎さんの頬に手を当てると、私からキスをした。





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