もっと美味しい時間  

両親とは仲がいいし、今でも大好きだ。
『じゃあ何で、もっと帰らないの?』って思うでしょ。

それはね……。

二人とも40も半ばだというのに、いまだに目も当てられないほどのラブラブっぷり。人がいてもお構いなしに、イチャイチャする始末。
いくら娘の前だからだといっても、やっていいことと悪いことがあるって言うのっ。
仲が良いのはいいことだけど、それを見せられるこっちの気持ちも考えてほしいもんだ。

転勤が多かった父も今は落ち着き、終の棲家としてこの街を選んだ。
水と空気がきれいなこの街は、夏になるとホタルが部屋の中で舞う。それはとても優雅で素敵だった。
一度知り合いの家にお世話になった時のその感動が忘れられなくて、いつかはここで住みたいと二人で考えていたらしい。
幸せそうで何よりだ。

でも今日は、その二人が待ち構えている家に、慶太郎さんを連れて帰る。
う~ん、とても不安……。

『好きな人が出来たら、いつでも結婚していいわよ』

なんて、まだ高校を卒業したばっかりの娘に言うような人たちだ。
結婚や同棲のことを、快く了承してくれるとは思うけど……。
その後が怖い。
いろんなことに興味津々、根掘り葉掘り聞いてくるに決まってる。
慶太郎さんに失礼なことを聞かなきゃいいけど……。

心配で、胸が痛くなってきたよ。






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