もっと美味しい時間
「藤野っ、あとどれくらいで出来上がる?」
「ごめんっ。あと十分!」
その週の金曜日の午後。
営業部で会議にかける書類を、猛ダッシュで製作中。
思っていたより資料集めに時間を割いてしまい、提出時間ギリギリになってしまった。
パソコンのキーボードを打つ指が痺れてくる。
「百花。焦ってミスしないようにね」
「はいっ」
最後の入力を終えると、Enterを押した。
「出来ましたぁーっ!!」
急いでデータを飛ばし印刷をかける。
人数分の書類を揃えると、寺澤くんに手渡した。
「藤野、お疲れ様。じゃあ俺は、ちょっと営業に行ってくるよ」
「お願いします」
私の頭を撫でると「おうっ」と一声発して、フロアを出て行った。
「どこでも子供扱い……」
寺澤くんに撫でられた頭を擦り、ムスッと文句を垂れる。
でもホッとした。
最初から最後までほぼ一人でやり終えた仕事に、達成感が押し寄せる。
「まだ仕事、続けたくなっちゃった?」
美和先輩が、からかうように言ってきた。
「そ、そんなことないですよぉ~」
でも美和先輩が言ったことは、あながち間違いではなかった。
大変だったことには違いないが、仕事は楽しかった。
今まで慶太郎さんや先輩たちに教えてもらったことや経験が、こんなに活かせた仕事はなかったから……。
それに、今まで一緒にやってきたこの部署との別れは、後ろ髪を引かれる思いだった。