もっと美味しい時間
帰りの電車の中での慶太郎さんは、最初こそ話をしていたものの、その会話もだんだん減っていき、いつの間にか寝てしまっていた。
何やかんや言っても緊張していた疲れと、昨晩の寝不足がたたっているんだろう。慶太郎さんと過ごす日の翌日は、ほとんど寝不足だ。
まぁこの件に関しては、自業自得と言ったところだけれど……。大人しく寝ようと言っても、きっと聞き入れてもらえないし。
「ふわぁ~」
私も大きなあくびが出てしまう。
でも私にもたれて寝ている慶太郎さんの可愛い顔を見ていると、寝てしまうのがもったいない。
今晩会食会がある慶太郎さんとは、私が住む街の駅でお別れ。
乗り換えの時間も殆ど無く、ゆっくり別れを惜しむ時間もない。
今度の週末は慶太郎さんの実家に挨拶に行く予定だから、またすぐに会えるんだけど……。
癖のある柔らかい髪をそっと梳く。一束掴んでは弄んだ。
ふわっと香る慶太郎さんの匂いに目を伏せると、心が満たせれていくのが分かる。
うん、充電完了っ!!
これでまた一週間、頑張れそうだ。
今週は仕事が立て込んでいる。
金曜日の晩には大阪に向う予定だから、頑張ってやり切らないと……。
それに、慶太郎さんのご両親に初対面する心の準備だってしなきゃいけない。
今回の、うちの親に挨拶するのとはワケが違う。
手土産だって、ちゃんとしたものを用意しないと。
気持ちばかりが急いてしまう。私の悪い癖だ。
大きく深呼吸して心を落ち着かせる。
本番までは、まだ一週間もある。
それに、隣でスヤスヤ眠っている慶太郎さんがいてくれれば、いつだってどんな時だって大丈夫だ。
彼の手を取り優しく包み込めば、その温かさに心が穏やかになる。
───ずっと、あなたのそばにいる───
包み込んだ手に顔を寄せ、誓いを立てるようにそっと口付けた。