もっと美味しい時間
「えっとね、それは……」
なんて説明すればいいのか分からなくて、しどろもどろしている私に、慶太郎さんが痺れを切らす。
「ああ~っ、もういいっ。京介に直接聞く」
なんか、ヤバイよね?
二人が喧嘩にならないといいんだけど……。
シーツを引っ張りだし身体を包むと、それを引きずりながら玄関まで行く。
「三時くらいには帰ってこれると思うけど、途中で連絡入れる。また迷うといけないから、一人で出かけるなよ。いいな?」
「はい……」
櫻井京介のなまえをだしてしまい、慶太郎さんを怒らせてしまったかもとシュンとしながら、頬に行ってらっしゃいのキスをする。
「そんな顔するな。何も怒ってない。それより、せっかく大阪まで来てくれたのに、一人で待たせてごめん」
「ううん、大丈夫」
それは分かってて来てるんだから……。
とびっきりの笑顔を向け身体を寄せると、慶太郎さんも嬉しそうに微笑み、チュッと音を立てて優しいキスをしてくれる。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい」
まるで新婚夫婦のようなやり取りに、心が幸せで満ちる。
そしてしばらく、慶太郎さんが出ていったドアを見つめていた。