もっと美味しい時間  

「何?」

私のことをずっと見ていたのか、いきなり顔を上げた私を見て怪訝な顔をした。

「慶太郎さん、いつもありがとうね。私、いつも与えてもらうばかりで、甘えてばかりで、何もお返し出来てなかった。このお礼は、ちゃんと身体で返すから!」

鉄板の上で次の食材の伊勢エビを焼いていた料理人さんの手が止まり、慶太郎さんは飲んでいたワインをぶっと音を立て吹いた。

「お、お前なぁ、自分で言ってることの意味、分かってるのかっ!? ここが個室でよかったよ」

慶太郎さんは呆れ顔だし、料理人さんは慶太郎さんの言ってる意味を理解したのか、クスクスと笑っている。

あれ? 私、何かおかしいこと言ったんだろうか……。
首を傾げ自分で言ったことを思い返していると、慶太郎さんが肩を寄せた。

「でもまあ、百花がそう言ってくれるなら、今晩ここに部屋取るか?」

へ? ここに部屋を取る?
慶太郎さんの言っている意味が、さっぱり分からない。
顔を慶太郎さんの方へ向けると、妖しく光る瞳が私の心を捉えた。

「だって、身体で返してくれるんだろ?」

「あっ……」

そういうことかっ!  私、言葉の使い方間違えたっ!?
その意味が分かると一気に身体が熱くなり、顔から火を吹きそうになってしまった。

私としては、『慶太郎さんに甘えてばかりじゃなく、奥さんとして頑張る』ということを言いたかったんだけど、身体で返すなんて……。
何とっちらかったことを言っちゃったんだろう。
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