もっと美味しい時間  

「寺澤くんっ、大丈夫?」

「な、何とか……。やっぱ藤野は優しいよなぁ。東堂支社長なんかやめて、俺と結婚しない?」

「しない」

「あははっ、寺澤カッコ悪~い。即答されてやんの」

美和先輩の大笑いに、頭を掻く寺澤くん。
もうこんな光景、毎日見ることが出来なくなるんだと思うと、また目に涙がいっぱい溜まってきてしまった。

「もう百花は……。これが一生の別れじゃないんだから。それに、私もいずれ大阪に行くことになるかもしれないし」

美和先輩の言葉に、一瞬で涙が止まる。

「えっ? それって京介と……」

「京介って、この前先輩が会社近くのカフェで、楽しそうに話してた男の人?」

「うそぉ~、京介がこっちに来てたなんて、私知らないんだけどっ!」

「なんか良い感じだったぞ。時々顔なんか寄せちゃってさ」

「二人とも、うるさーいっ!!!」

真っ赤になって怒る美和先輩があまりにも可愛くって、本当に京介のことがすきなんだと確信した。

「美和先輩、京介とうまくいってるんだ。なんか嬉しいなぁ」

「もうすぐ結婚する百花たちにはまだ全然及ばないけど、いずれそうなったらいいなとは思ってる。まぁ、私の願望だけどね」

照れながらそう言う顔は、私が初めて見る美和先輩の女の顔だった。

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