もっと美味しい時間
「百花のおつむじゃ答えが出なくて当たり前っ。早く戻るよ」
「美和ちゃんの意地悪っ!」
先に行く先輩の後を追って行くと、リビングのドアを開けた途端パンっと乾いた音が耳に飛び込んできた。
「明日香っ!! お前、いいかげんにしろよっ!! お前に何て言われようと、俺は百花と結婚するっ」
「分ったわよ、勝手にすれば。あとで後悔したって、知らないんだからっ!!」
さっきの音は、慶太郎さんが明日香さんの頬を叩いた音だったんだ。
左頬を押え泣きそうな顔で慶太郎さんのことを睨んでいた明日香さんが、その目を更にキツくして私のことを睨んだ。
「お兄ちゃんのこと何にも知らないくせに、私の方がお兄ちゃんのこと大切に思ってるのに……。あんたなんて、大っ嫌いっ!!」
そう私に向かって叫ぶとその場から離れ、早足で玄関から出て行ってしまった。
「明日香っ!」
慶太郎さんが追いかけようとするのを制止する。
「百花?」
「私が行く」
何でそんなことを言い出してしまったのか……。自分でも分からない。
でも本能が、私の心が、今明日香さんを追いかけるのは私だと言っていた。
正直、全くと言っていいほど自信はない。きっと今日一日では、理解してもらうのは無理だろう。
でも、それでも今行かないと、一生明日香さんとは仲良くなれないような気がした。