もっと美味しい時間
身体に付いていた機械や点滴が外れた頃、水華さんが神戸から来てくれた。
美味しそうなケーキをいっぱい持ってきてくれたのはいいのだけれど、私に近づいてきて言った言葉がいけなかった。
「わぁ~百花。あんたのオッパイ、見事に膨らんだわねぇ~。これって一時的なものなんでしょ? ちょっと写真撮らせてよっ」
そう言って、私の胸元に手をかける。
「ちょ、ちょっと待ってっ。それはマズいでしょ?」
「何言ってんのよ。女同士なんだし、恥ずかしがることないじゃないっ!!」
あっそうかっ!! あはははは……って、違うでしょっ!! ほんとに油断も隙もあったもんじゃないっ。
あなたはれっきとした男。邦男でしょっ!!!
着ていたパジャマのボタンを外しかけていた手を、パンッといい音を鳴らして叩く。
「キャアー。私のシラウオみたいな手を叩くなんて……。お前、いい度胸してんなっ」
どこで男モードスイッチを押してしまったのか、目の前にいた女もどきは、一瞬にして野獣の目をした男になる。そしてボタンに掛けていた手を離し私の顎を掴むと、クイッと上げて顔を近づけた。
「キスで許してやるよ。お前の唇、ウマそうだからな」
ペロッと自分の唇を舐めると、その距離を縮めてくる。
「す、す、水華さんっ。ヤメ、ヤメ……」
うまく言葉が出てこないっ。
もうダメッ!!
百花、大ピンチっ!!!
と思ったその時っ!
「邦男。百花から離れろ」
病室に地獄から響くような、低い声が聞こえた。