もっと美味しい時間  

出産は正期産になる37週目の週に、帝王切開での予定が入っている。
結城先生に、「思ったより大きく育ってるし、安全のために帝王切開ねっ」とあっさり言われた時は、卒倒しそうになった。

ただでさえ双子の出産ということにで不安だらけなのに、その上帝王切開っ!?
あり得ない……。
頭の中がテンパッて、思わず結城先生に、

「それって切腹ってことですよね?」

なんて聞いてしまい、「お前は何時代の人間なんだっ」と一緒に検診に来ていた慶太郎さんに怒られる始末。
慶太郎さんはいいよね。お腹を切られるのは、自分じゃないんだからっ。
結城先生は悠長に笑っていたけど、私にとっては切腹と同じ事だったんだよっ!!

「嫌だっ」「怖いっ」と繰り返し駄々をこねる私。それを慶太郎さんに「お腹の子のためだ」と宥められてしまった。
そうだよね。お腹の子のためなら、切腹くらい……。

そして2月の一大イベント“バレンタインデー”の日に、その日は決まった。

でも出産当日手術室に入る前に、やっぱり一騒動あったことは、内緒ってことで……。


下半身麻酔という意識はハッキリしている中での帝王切開での出産を乗り越え、二人の真っ赤な顔をした我が子との対面は忘れられない。
しかしこの手に抱いたのは、ほんの僅か。
次第に意識が無くなると、次に目覚めた時は病室のベッドの上だった。
慶太郎さんに頭を撫でられて目を覚ました私は、すぐに大粒の涙を流した。

「元気な子を二人も産んでくれて、ありがとな」

その言葉だけで、身体中が幸せに満ちていった。







< 321 / 335 >

この作品をシェア

pagetop