もっと美味しい時間  

ただの苦手な上司だった慶太郎さん。声を掛けられるのも迷惑ぐらいだったのに、一緒にいる時間が長くなって気になりだしたら気持ちが抑えられなくなって。

初めて男性に恋をして、恋に落ちてしまった───

慶太郎さんはいいオトコすぎてモテるから、女性関係の事では多々苦しめられたけれど、それも今では遠い思い出。

両家の親に慶太郎さんとの結婚も認めてもらい、会社を辞めて大阪に引っ越せば、明日香さんの一方的な攻撃にあって、結婚話も暗礁に乗り上げられそうになった。

街の小さなパン屋さんで初めての接客を慣れないながらも頑張っていた矢先、倒れて妊娠発覚。それも双子。

慶太郎さんと付き合うようになってから、一年と三ヶ月───

めまぐるしくいろいろなことがあったけれど、その全部を乗り越えた幸せがいまここにある。

慶太郎さんに、新と緑。そして隣のレストランには、私たちのことを心から祝ってくれる家族や親友、仲間たち……。

どれひとつも私には欠かせない、大切な宝物。

そして今目の前にある最愛の人に手を伸ばせば、その手を掴み私の身体を引き寄せた。

「夜だけじゃない。これから一生、お前の期待に応えてやる。覚悟しておけ。家族でサッカーチームを作るぞっ」

ニヤリと口角を上げてみせると、身体をギュッと抱きしめた。
一度言ったことは必ず実行させる慶太郎さんが言うと、冗談に聞こえないから困ってしまう。

「お、お手柔らかに……」

慶太郎さんの腕に抱かれながら顔を見上げそう囁くと、唇に甘いキスが落とされた。




HAPPY END……

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