【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
「そんな事ないわ! 廉君のご両親はあんなに仲が良くて幸せそうじゃない」

「そう見えるか? やはり子供だな」

胸が抉られる痛みに耐え、黙って睨み返すあたしに、哀れみのような表情を浮かべる紀之さんに苛立ちが募った。

彼は私達を傷つけたいだけ。

どんな言葉も信じてはダメ。

そう思うのに、今までとは違う彼の雰囲気と、悲しげな瞳に心が乱れた。

『あなたが専務の婚約者なの?』
『こっ、婚約者ですか? ……それは…また』

従業員の台詞と安田さんの誤魔化すように笑った姿を順番に思い出す。

単なる偶然だと思いたかった。

でももしかしたら…

周囲の人は皆、婚約者の存在を知っているのかもしれない。


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