【長編】Little Kiss Magic 3~大人になるとき~
僕の返事に深く息を吐き、振り返る紀之さんの瞳は、これまでに見たことが無いほどの強い意志を秘めていた。

彼がこれから話すことは決して僕を騙すための戯言ではない。

命を懸けていると言ったのは、嘘ではなく、彼は本気で春日を敵にまわす覚悟をしているのだと直感した。

「お前、ジジイの孫の篤(あつし)って知ってるか?」

「いいえ。初めて聞いた名前だ」

「そうか、無理も無い。14~5年前の事だからな。
当時ジジイは篤を次の後継者にと考えていたんだ。
実際、その時春日を継げる男子は彼しかいなかったからな。
だが、篤は大学2年のとき高校生を孕ませた上、結婚するといって家を飛び出し春日と縁を切ったんだ」

「縁を切った? おじい様がそれを許したっていうんですか?」

「許すわけねぇだろ? だが、あの一家は楓の時とは違い何事もなく今も平穏に暮らしているんだ。何故だと思う?」

聖さんの父親の死におじい様が関わっているのなら、同じように篤さんの家族に手を下すことも容易に想像できる。


だが、彼らにはそれがないというのか?


何故だ…?


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