饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「神殿の書庫の、奥の奥にあった古い本に、ちゃんとあった方法ですよ。生け贄の頭の代わりに、饅頭を捧げるってね」

「そっか。饅『頭』だもんね。そういうことだったのかぁ」

 虎邪の後ろで、緑柱がぽんと手を叩いた。

「だから、儀式はちゃんと行われた。俺はあんまりカミサマを信じないタチですが、さっきは確かに波が不自然に立ったし・・・・・・。そもそもこんな細い川に、波なんてそうありませんからね。この川には、確かに神がいるのでしょう。で、ちゃんと供物を受け取ってくれたのだから、もう酷い水害は起こらないと思いますよ」

 そう言って、虎邪は祭壇の上の神明姫を抱き起こした。
 虎邪に起こされて、ようやく神明姫は、恐怖から解き放たれたようだ。
 緊張の糸が緩み、ふ、と目を閉じると、そのまま気を失った。

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