饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「まぁ考えてみれば、丘から見渡したときに、それなりの神殿であれば、わかっただろうねぇ」

 緑柱が、ぽんと手を打って言った。
 この緑柱も、冷静なふりをして、かなり惚けているようだ。

 むきーーっと虎邪は、髪を掻きむしった。

「嫌だぁ、町中で野宿なんて。まるで乞食じゃないかぁ」

 悶絶する虎邪と、う~む、と首を捻るわりに何も考えていない風な緑柱に、そのとき不意に声がかかった。

「あの、もし・・・・・・」

 このような夜道には不似合いな、か細く小さな声。
 虎邪は思わず、腰の剣に手をかけた。

「誰だっ!」

 勇ましく誰何の声を上げた虎邪だったが、暗がりで怯えたように立ちすくむ影に気づくと、たちまち相好を崩した。

「あっご免ねぇ。驚かせちゃったみたいだねぇ。もしかしてお嬢さんも、道に迷ったクチかなぁ~」

 剣にかけていた手を後頭部にやり、ぽりぽりと掻きながら、虎邪はその影に歩み寄った。
 そこにいたのは、まだ幼さの残る少女だったのだ。
 しかも、可愛い。
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