饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「こんな夜に、一人で出歩くのは良くないよ。一緒にいたほうが、安全だよ?」

 言っていることは間違っていないのだが。
 言い方がまずかったのか、少女は少し後ずさりした。
 少女が動いたお陰で、彼女の腕に嵌っていた腕輪が、きらりと光る。

「あれっ」

 虎邪が、その腕輪を指差した。

「それ、神殿の紋章だね。てことは、もしかしてお嬢さん、長の娘さん?」

 大陸中の神殿は、皆統一した紋章がある。
 それを身につけることができるのは、神官か、その町の長の一族。

 神官は男だけ。
 町の長にしては幼いし、ということは、この子は長の娘か、一族の娘ということになる。
 この虎邪にも、それぐらいの知識はあるのだ。

「あの、中央からいらした、神官さま?」

 ようやく、少女は口を開いた。
 虎邪が頷くと、ほっとしたように、少女は身体の力を抜いた。

「ああ、良かった。てっきりもっと、お年を召したかたと思ってましたので、声をおかけするか迷ったのですけど」
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