饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「老神官には、ここまでの道中がキツかろうということで、私が。確かにまだ若輩者ですが、それなりの場数も踏んでおります。己で言うのも何ですが、その辺の神官よりは、全然頼りになると思いますよ。申し遅れました。中央第一神殿から参りました、虎邪と申します」

 す、と少女の足元に跪く。
 気障ったらしくも見える仕草だが、意外にしっくりと決まっている。
 ・・・・・・本人も言ったように、こういう『場数』は踏んでいるのだ。

 まぁ、と感嘆のため息とも取れる呟きを漏らし、少女は膝を折った。

「水竜の町長の娘、神明(シェンミン)と申します。まさかこのようにお若いかたが、たったお二人で来られるとは思わず、お出迎えも致しませんで、誠に申し訳ありません」

 ぺこりと優雅にお辞儀する。

「お気になさらずっ! ささ、美しい女性が、そんないつまでも跪いているものではありません!」

 初めの馴れ馴れしさはどこへやら、相手が長の娘ということと、可愛らしい姫君であるということで、虎邪はがらりと口調を改め、しかし鼻の下は伸ばしっぱなしで、いそいそと少女を促した。

「あの、神官様たちは、どこかすでに、宿が決まっていたりするのですか?」

 虎邪に手を取られて、少女はおずおずと言う。
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