饅頭(マントウ)~竜神の贄~
第三章
 さて、そんなこんなで長の家に入った二人は、早速広間に設えられた豪勢な夕食にありついた。

「わざわざ中央から高名なる神官様をお迎えするにも関わらず、お出迎えも寄越しませんで、誠に申し訳ありませぬ」

 長は、先程から虎邪(フーシェ)の前で、ひたすら謝っている。
 このような小さな町、権力の集中する中央都市から睨まれたらひとたまりもない。
 役人に失礼があってはいけないという態度が、ありありと現れている。

「何、お気になさらず。我々もただ二人だけで来たのですから、わからないでも無理はない」

 杯の酒を飲み干し、虎邪は上機嫌で応えている。
 もっとも長のくどくどしい話など聞いてはいない。
 意識は少し下座に控えている神明(シェンミン)姫に釘付けだ。
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