饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 姫はしばらく泣き続けていたが、やがて立ち上がると、二人を追い越して振り返った。

「離れはお酒を召していては、辿り着くのが難しゅうございますから、ご案内差し上げようと追って参りました」

 涙を拭き、神明姫はそう言うと、どうぞ、と二人を促す。

「それは・・・・・・ありがとうございます」

 虎邪がやっと、少し表情を和らげて、姫に近づく。
 が、姫はあからさまに怯えた表情で、身体を強張らせた。

「ああ・・・・・・すみませんね。ちょっと苛々していたもので」

「あ、あの。えっと、こ、こちら側を歩いてください」

 謝る虎邪を、姫は己の左側に促す。
 虎邪が訝しく思いながらも姫の左に寄ると、びくびく、といった様子で虎邪の右を歩き出す。

 歩いている間も、怯えた目で虎邪の左腰の辺り---剣をちらちらと見る。
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