饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 そんなに怖かったんだろうか、と、虎邪は少し申し訳なく思い、しかもここで、こんなに姫に怯えられてしまったら、今後仲良くもなれないではないか、という思いに至り、彼は笑顔を作って姫に話しかけた。

「随分と怖がらせてしまったようですね。心配しなくても、姫君とわかったからには、不用意に抜いたりはしませんので、安心してください」

 そう言って、ぽん、と剣を叩いてみせる。
 姫は、はっとしたように虎邪を見、ふるふると首を振った。

「ち、違うのです。あの、驚いたのは本当ですけど、あの、剣が・・・・・・」

「剣?」

「怖くて」

 虎邪の顔には疑問符が浮かぶ。
 彼の剣は、特に妙な形をしているわけではない。
 妙な力を宿したものでもないし、至って普通の剣である。

「大丈夫ですよ。決して姫の前では、抜いたりしませんから。あ、もちろん姫君に危険が及ぶ場合は、お助けするために抜くこともありましょうが」

 よくわからないが、とりあえず虎邪は、姫を安心させるべく、優雅にお辞儀してみせた。
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