饅頭(マントウ)~竜神の贄~
 指差すほうを見れば、確かに一軒の建物がある。
 が、それを見ても、虎邪は胡散臭そうに顔をしかめるばかりだ。

 何せ、それは神殿の横に建てられた、小さな掘っ立て小屋なのだ。
 神殿の物置、と言ったほうが、しっくりくる。

 こんな掘っ立て小屋に住んでいる神官が、それほど大層な儀式など行えるのだろうか。
 神官というものは、それなりに地位のある者だと思っていたが、それは中央都市ならではのことなのだろうか。

 いやでも、虎邪らがこの町に来るということで、長は非常に恐縮していた。
 それは神官だから、というわけではなく、単に中央都市から来た人間ということで、僻地の人間は敬ってくれただけなのだろうか。

 などと、虎邪は何気に失礼なことを思いつつ、神官の家に歩きながら神明姫に問うた。

「・・・・・・儀式って?」

「川のもっと上流のほうに、儀式用の小さい神殿があるんです。そこに運ばれた供物を、神官様が川に投げ込むのですわ」

「へ~え。じゃあ儀式の後は、この辺りが流された供物でごちゃごちゃになるんだね。ああ、そのために、本神殿がここにあるのかな」

「え?」
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