饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「それで、その生け贄を選ぶ占いをしていたのですよ。その結果がちょっと信じられず、困っていたところへ、都市からの神官様がいらしているということを思い出し、占いの確認をしていただきたく・・・・・・」

 にこにこと、老神官は傍らにまとめてあった竹串のような細い棒を手に取った。
 結構な本数を束ね、虎邪に差し出す。
 次いで水を張ったたらいを机の上に用意した。

「水占いですか」

 串の束を見ながら、虎邪が呟く。
 占いの類としては、簡単で基本的な方法である。
 ただ竹串を水に放り込むだけ。

「水害に関することですから、水占いが一番良いのです」

 どうぞ、と老神官が、水盆を指す。
 虎邪は一度、串を水面すれすれで振ると、ぱっと手を開いた。
 細い串が、水に散る。

 ただそれだけの方法だが、明らかに一本、束から離れて、ぷか、と浮いた。
 その一本を掬い上げ、老神官は串を改める。

「ああ・・・・・・やはり・・・・・・」

 眉間に皺を寄せ、老神官は唸るように言った。
 串はそれぞれ、生け贄になるべきモノを指すのだろうが、何が書いてあるわけでもないので、虎邪には何が選ばれたのかはわからない。

「誰がやっても同じ結果ということは、やはり正しかったのですな。わかりました。神のご意思に従いましょう」

 うん、と頷き、老神官は、がたがたと水盆を片付け始めた。
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