饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「わたくしも、たまに見ますよ、生々しい夢」

 恋人と会った後とか、と笑う露に、神明はため息をつきつつ、首を振る。

「そんな良い夢じゃないもの・・・・・・」

 言いながら、でも、と考える。
 前半は、確かに良い夢だった。
 会いたかった人にやっと会えた、という嬉しさは、しっかりと感じている。
 と言っても、神明には今のところ、そんな相手はいないのだが。

「運命の相手かもしれませんよ」

 いきなりがばっと身を乗り出して、露が言う。
 好奇心丸出しの、きらきらした目だ。

 確かにあれほど『人に会えて嬉しい』と思ったことなど、現実ではない。
 心から想う人、というものに会うときは、きっとああいう感じになるのだろうな、と、夢の中とはいえ、それこそ生々しく感じたものだ。

 が。

「だって、最後には剣を向けられるのよ」

 ぎゅっと、神明は胸元で拳を握りしめた。
 思い出すと、悲しくなる。

 夢で感じた嬉しさ同様、こんな悲しみも初めてだ。
 物語でよく読む、『胸が張り裂ける』というものだろう。
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