饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「あれ? 姫君は緑柱に興味ありですか? ショックだなぁ」

 不意にかけられた声に、神明姫は、はっと我に返る。
 見ると、虎邪が薄笑みを浮かべて姫を見ていた。
 その表情に、どきりとする。

「姫は、まだまだ幼いなぁ。見た目大人な奴のほうが、気になりますか」

 虎邪お得意、小馬鹿にした言葉と極上の笑み。
 魅力全開の虎邪と、緑柱に対する気持ちを暴露されたことで、神明姫は真っ赤になって、あからさまに狼狽えた。

「そそそそ、そういうわけではありませんっ! 今ひとつ、どういう関係のお二人かわからなかったのでっ」

 気を紛らわすべく茶器からお茶を淹れながら言うが、何分動揺しまくっているので、急須から注がれるお茶は、器に入るよりもこぼれるほうが多い。

「まぁ・・・・・・緑柱は敬語も使いませんからね。立場は一応下僕ですが、ほんとのところは、友達ですよ」

 肩を竦めながら、虎邪が言う。
 緑柱が小さく、『下僕て』と呟いた。

「俺に興味は、持ってくれないのですか?」

 ちらちら緑柱を見る神明姫に、虎邪は少し身を乗り出した。
 その彼を見た途端、神明姫は後悔する。

 どうしても、虎邪に見つめられると、心臓が跳ね上がる。
 言うことは軽いし、神官のくせに素行が悪い奴だなんて、とんでもないと思うのに、一旦虎邪の視線に絡め取られると、何故か強引にその存在が入り込んでくる。
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