饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「そうだ。この俺からも逃げるような姫が、あんな野郎から逃げないわけないじゃないか」

 一気に自信を取り戻した虎邪は、言うなり颯爽と神明姫に駆け寄った。

「おやおや。姫君は今、私の案内役をしてくれているのですよ。客人を放っての世間話は、感心しませんなぁ」

 ぐい、と姫の腕を後ろから引っ張り、己のほうに引き寄せる。

「あ・・・・・・」

 神明姫が虎邪を見上げ、少し安心したような表情になった。
 それに目ざとく気づき、デブの男はじろりと虎邪を見る。

「何じゃ、貴様は」

 都市からの神官とはいえ、虎邪はそんな神官然とした着物を着ているわけではない。
 質素ともいえる衣装を纏った、若い男でしかない。

 かたや肥え太りの男は、これ見よがしに立派な着物を着、ごてごてと宝石で全身を飾り立てている。
 残念ながら品がないので、宝石の美しさも、ほぼ活かされていないのだが。

 明らかに格下扱いで、男は虎邪を不躾にじろじろと眺めた。
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