饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「平和的だぁ? ふざけんな。土地だけじゃなく姫まで手に入れようたぁ、どんだけ欲深いおっさんなんだ。てめぇの姿を省みろってんだ」

「ふっ虎邪様っ」

 遠慮無く罵声を浴びせる虎邪を、慌てて神明姫が押し留める。
 が、すでに遅い。
 目の前の男は、最早怒りで真っ赤になっている。
 耳と鼻から煙が出そうだ。

「こ、この小僧がっ! 目に物見せてくれるわっ」

 そう叫ぶや、自分は、ざっと下がる。
 同時に手を振ると、お付きの破落戸が動いた。
 一人が虎邪を捕まえようと手を伸ばす。

「汚い手で触んなよ」

 ばし、と難なく伸びてきた手を叩き落とし、虎邪は少し考えた。
 少し離れている緑柱に、顔を向ける。

「緑柱。こいつら蹴散らしておくれ~」

「・・・・・・俺がかよ」

 なんでやねん、とでも言いたそうに、しぶしぶ緑柱が一歩前に出る。

「ということで、お前らの相手は俺がするらしい」

 だるそうに、破落戸二人に言う。
 その様子に、遠巻きに見ていた男が笑い声を上げた。
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