饅頭(マントウ)~竜神の贄~
第七章
「あ、お、お怪我はありませんか?」

 男たちが立ち去ってから、しばらくぼぅっとしていた神明(シェンミン)姫は、はた、と緑柱(リュイジュ)を見て声をかけた。
 緑柱は、何が? とでも言うように、きょとんとして少し首を傾げる。
 どうもコミュニケーションが上手く取れない人だ。

「強いんですのね」

 無理矢理会話を試みるが、そんな姫の努力は、緑柱の一言で無に帰す。

「戦闘は、虎邪(フーシェ)のほうが強いですよ」

 ちら、と見上げる神明姫に、虎邪は、へら、と笑いかける。
 こちらも、大して強そうにも見えない。

 でも、と神明姫は、虎邪の腰に視線を落とす。
 彼の腰には、大きな剣が差さっている。

 そういえば、一度廊下で抜かれたが、確かにあのときは、一刀のもとに斬り捨てられそうな勢いだった。
 振り向きざまだったが、過たず首筋を狙って振り下ろされたのだ。

 思わず神明姫の手が、己の首を撫でた。

---怖い・・・・・・---

 何故だかとても怖くなり、神明姫は虎邪から視線を逸らせた。

「あれ? 姫はお疲れ? じゃ、このまま川沿いを歩いて帰りましょうか」

 虎邪が姫を追い越し、振り返って手を差し出す。
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