饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「あっ・・・・・・わかったわ!」

 不意に声を上げた神明姫に、露が驚いて顔を上げた。
 がばっと窓に飛びつく神明姫に、露は慌てて腰を浮かす。

「ど、どうなさいました。あまり動くと、馬車の安定が崩れます」

「わかったのよ! 初めて見たときには、緑柱様が夢のかただと思ったのに、全然気にならないわけが」

 勢い込んで言う神明姫に、露はきょとんとする。

「剣だわ! 何故だか今、いきなり気づいたの。虎邪様の剣、夢のあのかたの剣だわ、きっと。だから、あんなに怖かったのよ」

 夢の中のあの人のことは、顔すらもよくわからない。
 まして剣など、刃がやけに光ったと思ったぐらいで、それこそ全く見ていなかったと思うのに、何故いきなり今気づいたのだろう。

「え、じゃあ、あの神官様が、姫様のお相手ですか?」

 露に言われて、勢い込んでいた神明姫は、少し赤くなった。
 すとん、と座席に座り直す。

「・・・・・・そういうことかしら。た、確かに、一緒にいればいるほど、気づけば惹かれていくお人ではあるかも・・・・・・」

 もぞもぞと言っている間に、馬車は程なく屋敷に着いた。
< 73 / 127 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop