饅頭(マントウ)~竜神の贄~
「ど、どうしたんだよ。生け贄の儀式を止めさせる方法、わかったの?」

「儀式自体は、止めさせられない。必要だからな。でも、神明姫を助ける方法は、思いついた」

 走りながら、虎邪は短く説明する。
 深くは追求せず、それは良かった、と、後に続いていた緑柱だったが、ふと向かっている方向に疑問を抱く。

「どこに行くんだよ。そっちは長の家じゃないか」

「用意するものがあるんだ」

 これまた短く言い、虎邪は長の家に飛び込むと、家の裏手に回る。
 そのままの勢いで台所に入ると、驚いた様子の召使いに、早口に命じた。

「パンの生地はあるか? 明日の朝食用に作ってあるはずだ。それに・・・・・・そうだな、その辺の、残り物を詰めるんだ」

 言いながら、竈の近くに駆け寄る。
 思った通り、そこには大きなパン生地が用意されていた。

 それを抱え上げると、虎邪は、ばん! と大きな机の上に生地を広げた。
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